デカダンス ストーリーに関する感想

デカダンス最終話、視聴完了しました。
毎週目まぐるしく物語が展開し、最後まで圧倒的な密度で走り抜けた作品でした。
折角ですので感想をあれこれ書いておこうと思います。ネタバレを多分に含むので大丈夫、という方だけご覧ください。


まず、私が序盤から気になっていたのはこの物語の着地点でした。
この作品は最終目標が明示されておらず、その時々の状況に応じて話が転がっていくライブ感のある進行スタイルですから、この疑問は最終話まで解けることはありませんでした。

結論として、この話のオチは「システムにとってバグとは自身の一部であり設計の範囲内、抗おうとするバグの行動によってシステムはより強固に進化する。カブラギはシステムを破壊することは出来なかったが、その行動によってシステムと世界は大きく変化した」というものでした。
結局はシステムの手のひらで起こったことであり、この物語もシステムの学習過程の一部だった、ということですね。
そう考えると、サイボーグ達の行動にシステムが直接干渉したり、操作してこなかったことに対しても納得がいきます。「ディストピア世界の割に管理ガバいな」と感じたこともありましたが、ちゃんと理由があった訳です。

この結末について、私は非常にうまい落とし所だと思いました。
というのも組長が目指したシステムの破壊はほぼ不可能な話でしたし、仮に破壊できたとしてもその後の問題が山積みになるのは目に見えていましたからね…
デカダンスの世界を現実的に考えた場合、これが一番丸い収め方なのではないでしょうか。

とはいえ満足感、いわゆるカタルシスがあったか、と言われると微妙な所ではあります。
なにせ物語の中で常にシステムが大きな障壁として立ちふさがり、実際にマイキーを筆頭にこれまで多くの犠牲があった訳で…システムに対して、破壊とまではいかなくても「一発殴らせろ」と思ってしまったのが正直な気持ちです。

この「カタルシスが足りない」という気持ちは他の部分にもあって、代表的なのはパイプの消失です。
直接的に消滅する描写が無かっただけに「ワンチャン助かっているのでは…?」と僅かに希望を持っていましたが、残念ながらその願いは叶わず。「やっぱり助からなかったのか…」という気持ちのままラストシーンを迎えることになりました。

作中、良くも悪くも好き放題に動いた組長が"バックアップ"という反則スレスレの方法で蘇ったにも関わらず、パイプは描写されることなく消えてしまいました。それならばせめて「消えていくパイプ」「パイプの消滅を知るナツメ」「黙って協力させた組長に怒るナツメ」などを一つでも描写し、パイプの消滅についてきちんと決着をつけるべきだったと思うのです。
どちらにせよ、人間のバグであるナツメ、サイボーグのバグであるカブラギ、ガドルのバグであるパイプという、それぞれ作中で対になる特別な存在でしたから、その一部だけが欠けて終わりを迎えるのは寂しいですね。

あるいは終盤の展開についても少し唐突感がありました。
最後の最後でリミッター解除を使うシーンは物凄く痺れましたが、それまでの「デカダンスを素体として接続する」や「各地に転がっている旧デカダンスのパーツを使う」は降って湧いたような話で、ご都合主義と捉えられかねません。
これらの展開についても序盤から伏線を張っておけばより説得力が出たのかなと思います。

とはいえ、こうした気になる点の殆どは尺不足に起因するもので、要するに無いものねだりです。
冒頭に述べた通り、本作は圧倒的な密度でストーリーを駆け抜けた作品でありそこが魅力の一つです。2クールかけてじっくり描写すればより面白い作品になったかと言われれば、そこまで単純な話ではないでしょう。
因みに私は尺が増えるのなら、初回以降殆ど絡まなかったナツメとリンメイの掘り下げが見たいです、はい。


総括すると、飛ばしたり投げっぱなしで終わってしまった部分はあれど、全体として魅力的で面白い物語でした。
設定こそ独特ですが、話の進み方やキャラクターの動き方はかなり王道的で、絶望的な状況でも安心感をもって見ることが出来る作品だと思います。

登場人物も皆個性的で、特に表向きの主人公であるナツメは明るく表情豊かで、自分を変えるためにひたむきに努力する、とても応援したくなるキャラクターでした。
反対に実質の主人公である組長は初恋した中年おじさんの如く、独りよがりなレベルで不器用に暴れまわるキャラクターで、歴戦のイケオジにしか許されないギリギリの立ち回りを見せましたね。若く未熟な主人公がこれをやってしまうパターンも多いので、良い意味でバランスが取れていたんじゃないでしょうか。

不満点もあれこれ書きましたが、初回以降、毎話5,6回ほど見直すくらいには楽しみに追っていました。
先の読めない展開とアニメオリジナルのストーリーがマッチした良い作品だったと思います。
長くなりましたが感想は以上になります。他のアニメも一通り終わったらまとめて短い感想を載せる予定です、たぶん。